「被害者にも落ち度がある」回答45.8% 身近に潜むDV・児童虐待の誤った理解

コロナ禍の今、DV・児童虐待に関する相談は「窓口を増やしてもすぐに埋まる状態であり、件数の増加を実感している」と、NPO法人女性ネットSaya-Saya代表理事の松本和子先生は言います。このような状況において、DVや児童虐待は他人事ではありません。あなたの周囲に潜んでいる可能性があるだけでなく、あなた自身が被害者、加害者であるかもしれません。DVは夫婦等の親密な間柄で起こります。また、DV・児童虐待は併発している恐れもあるのです。この現状について、男女500名を対象に実施したアンケートをもとに、松本先生にお話をうかがいました。

あなたは、暴力を振るわれる側にも落ち度があると思いますか?

2020年8月Yahoo!特別企画調べ:20歳以上の男女500名を対象とした「DV・児童虐待に関するアンケート」

「暴力の被害者にも落ち度がある」との考えが約半数

「あると思う」「多少はあると思う」との回答が45.8%と、約半数となりました。どんな理由であれ、暴力を振るって良い理由にはなりません。これは暴力を容認する考え方であり誤った認識ですが、世の中の理解は未だ不十分であることがうかがえます。

松本先生より

「怒り」も自尊心を守るために大切な感情ですが、「感情」と「行動」は別です。暴力を選ばずとも解決できるさまざま方法があるなかで、あえてそれを選ぶ加害者側の責任と言えます。男は強くあるべき・女は家事をするべきなど、男女間における役割に関する思い込みや、価値観の違いなども暴力の背景にある場合があります。DV・児童虐待の被害者に落ち度があるというのは、弱者への「見えない抑圧」の存在が社会には理解されていないことの表れです。特に、家庭内で行われるDVや児童虐待は「強い者から弱い者へ」という、同じような支配構造を持っており、相手をコントロールしようとするものです。このような一方的な暴力は、決して許されるものではありません。

次からは、DVと児童虐待が同時に起こる要因を事例とともに見ていきます。

DVと児童虐待は、なぜ同時に起こるのか?

ここでは、夫から妻へのDVがおこなわれている事例を示していますが、妻から夫へDVがおこなわれていることもあります。

子どもがDV加害者から虐待を受ける事例
子どもがDV加害者から虐待を受ける事例

DV被害者は、DV加害者に対する恐怖心から判断力や感情がまひしてしまい、子どもに対する虐待を制止できなくなる場合があります。

子どもの前でDVがおこなわれる事例
子どもの前でDVがおこなわれる事例

子どもの前でDV(面前DV)がおこなわれることは、子どもの心を傷つけます。これは子どもへの「心理的虐待」に該当します。

子どもがDV被害者から虐待を受ける事例
子どもがDV被害者から虐待を受ける事例

継続してDV被害を受けていると、感情がなくなり、加害者から言われるままに子どもを虐待してしまう場合や、DV被害者が自分の身を守るために仕方なく子どもを虐待する場合があります。

他にも、DV加害者がDV被害者の悪口を子どもに言い続けることで、DV被害者と子どもの関係を壊す例などもあります。このように、DVと児童虐待は密接に関わっており、その構造は非常に複雑です。また、周囲の人はもちろん、当事者さえも加害や被害に気づかないことがあったり、家庭内のことだからと誰にも相談しないということがあります。

どんな行為が児童虐待になり得るのか?

あなたは幼少の頃、体罰を受けたことがありますか

2020年8月Yahoo!特別企画調べ:20歳以上の男女500名を対象とした「DV・児童虐待に関するアンケート」

あなたは、しつけのためであれば、子どもに体罰を行うことは仕方がないと思いますか?

2020年8月Yahoo!特別企画調べ:20歳以上の男女500名を対象とした「DV・児童虐待に関するアンケート」

体罰や暴言は、心身に悪影響を及ぼす恐れがある

体罰を受けたことがあると回答した方は51.0%。また、そのうち体罰を仕方がないことだと考える方は「そう思う」「どちらかというとそう思う」の回答を合わせて50.2%という結果になりました。
「自分も体罰を受けたから同じようにやっても良い」という発想は幼少期の経験に少なからず関係があると、松本先生は言います。

松本先生より

怒鳴りつけるなどの言葉の暴力の方が、身体への暴力よりも、子どもの脳へのダメージが大きいことが明らかになっています(※)。暴言は恐怖を植え付けるだけで、行動自体を変えることはできません。「怒鳴られるまではやってもいい」と誤学習をするので、本当の意味のしつけにはならないのです。また、このような家庭で育つ子どもは、DVを見ないように、暴言を聞かないようにと情報をシャットアウトするようになります。そうすると、視覚野・聴覚野に悪影響を与え、しつけのつもりがかえって脳の成長・発達に影響を及ぼす恐れがあると言われています。

※出典:『実は危ない! その育児が子どもの脳を変形させる ほめ育てで脳は伸びる』(友田明美)

あなたは幼少の頃、父と母が口論しているところを見たことがありますか?

2020年8月Yahoo!特別企画調べ:20歳以上の男女500名を対象とした「DV・児童虐待に関するアンケート」

あなたは幼少の頃、あなたの家庭では、父と母の力関係はどちらが強かったと思いますか?

2020年8月Yahoo!特別企画調べ:20歳以上の男女500名を対象とした「DV・児童虐待に関するアンケート」

「見えない暴力」が蔓延する社会

父と母との口論を見たことがある方は「よくあった」「たまにあった」を合わせて69.4%。家庭内の力関係については「父の力が強い」「どちらかというと父の力が強い」と感じていた方が69.0%となりました。多くの方の意識にあるように、親は上手に隠せていると思っていても、子どもは家庭内の力関係を敏感に察知してしまうのです。

松本先生より

家庭内の緊張状態において、子どもは多くのエネルギーを使い、相手の顔色ばかりをうかがうようになります。それでは自分の人生を生きていくことができません。また、家庭内での力関係を目の当たりにすることで、子どもも同じように物事を力で解決しようとしたり、偏ったジェンダー観を持ったりする恐れがあります。常にどちらかに従わなければいけない状況を作らず、気持ちを伝える言葉を多く使ってコミュニケーションをとる姿を見せることで、うまく解決する方法を子どもたちも学んでいくでしょう。

あなたにできること

あなたは、実際に児童虐待を見聞きして、児童相談所に通告(通報)したことがありますか?

2020年8月Yahoo!特別企画調べ:20歳以上の男女500名を対象とした「DV・児童虐待に関するアンケート」

周囲の人は気づきにくい、という現状

児童虐待について「見聞きしたことはない」との回答が89.0%と、約9割の方が問題に関与した経験がないことが分かりました。「親密な関係だけに起こるために、周囲の人が気づけない」というDV・児童虐待の特徴が、顕著に表れる結果となっています。

松本先生より

DVや児童虐待は加害者による巧妙なコントロールで隠されている場合も多く、被害者でさえ被害に気づけないでいるという実態があります。特に心理的虐待は、外見に現れないため分かりづらいですよね。地域の人はもちろん、身近な人でも発見できず、周りの人から相談につなげることの難しさを実感しています。多くの方は、まず親や兄弟姉妹、友人に相談をすることが多いのですが、その際に「あなたも悪い」というようなことを言われると、専門機関に相談することを躊躇してしまいます。

もし、あなたが気づいたら

あなたが相談を受けたり、被害を見たり聞いたりした際は、被害者を責めることなく、その事実を優しく受け止めてあげてください。「話してくれてありがとう」「あなたは悪くない」といった、肯定的な言葉をかけてあげるとなお良いでしょう。そして、専門の相談機関に相談するよう伝えてください。
児童虐待の場合は、児童相談所に通報してください。通報した方の秘密が漏れることはありません。確証が得られず、通報をためらう気持ちもあるかと思います。しかし、DV・児童虐待は外部から見えないからこそ発見が難しい問題です。外傷が見られない場合でも、虐待が疑われる際には「子どもの泣き叫ぶ声が止まらない」「表情が乏しい」「大人へ過度な反抗的な態度を取る」「家に帰りたがらない」などの兆候が見られます。何より大切なのは、被害者の心に寄り添うことです。あなたの行動が、身近にいる人を助け、社会問題を解決する一歩となるかもしれません。

松本先生より

DV・児童虐待は他人事ではありません。各自がそう思っているうちは、身近に潜む問題を発見することはできません。まずは、ひとりひとりの意識を変えて、暴力によらない解決への理解を広げていく必要があります。

より多くの方が関心を持つことで、被害を防ぐことができると思います。「何かおかしい」と思ったら、ひとりで悩まず、ご相談ください。また、周りに悩んでいる方がいたら相談窓口を教えてあげてください。

自分らしい人生を送るために

多くの被害者は「悪いのは自分だ」「我慢すればいつかは解決する」といった考えを持っています。しかし、あなたは悪い人でも、弱い人でも、かわいそうな人でもありません。また、ひとり耐え続けることで問題が解決することもありません。もし今、あなたが何かに耐え忍んでいるのであれば、あなたはとても力強い人であり、すばらしい人です。その力を、今度は相談する勇気に変えてみませんか? 電話だけでなく、メールやチャットで相談を受け付けているところもあります。どんな些細なことでも構いません。あなたの想いをお聞かせください。

主な相談窓口

  • DVかもと思ったら♯8008
  • 児童虐待かもと思ったら189
  • DV相談プラス
    DV相談プラスのホームページはこちら
    DV相談プラスのメール相談はこちら
    DV相談プラスのチャット相談はこちら
  • 18才までの子供がかける電話チャイルドラインはこちら
松本和子

松本和子さん プロフィール

NPO法人女性ネットSaya-Saya代表理事。(社会福祉士・精神保健福祉士)
精神科ソーシャルワーカーとして勤務後、2000年6月、DV等暴力被害女性の民間支援団体として、NPO法人女性ネットSaya-Sayaを設立。現在、NPO法人女性ネットSaya-Sayaで、カウンセリング、及びサポートグループ、びーらぶ(暴力被害女性とその子どもの同時並行心理教育プログラム)などを担当。他に、各地域での、DV被害者支援養成講座講師、びーらぶインストラクター養成講座講師。千葉市ケース検討会議スーパーバイザー、2019年内閣府DV等の被害者のための民間シェルター等に対する支援の在り方に関する検討会に構成員として参加。

掲載期間 : 2020/10/2〜2020/11/30

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