関西の交通における大動脈として、1日平均約70万台以上の車両が行き交う阪神高速道路。その総延長距離は258.1kmに及び、阪神都市圏※1全体の交通量の15.4%を占める都市高速道路ネットワークを形成している。
現在も関西の都市インフラとして、機能向上を図るプロジェクトを進行中だが、公平な料金体系のさらなる前進と、さらに効果的に利用しやすい高速道路を目指し、令和6年6月1日より料金改定を実施する。
今回の料金改定におけるポイントは、下記の2つ。
(1)利用度合いに応じた公平な料金体系の実現に向け、対距離制を基本とした新たな上限料金を設定
(2)経路によらず起終点間の最短距離を基本に料金を決定
上限料金の見直しに伴う長距離利用の料金変更・新たな上限料金の設定と、割引制度の導入・拡充が主な改定内容だ。
32.3kmを超える長距離利用の上限料金を変更 影響は利用者の約1割
平成29年6月3日から導入された料金では、国の基本方針である高速道路を賢く使う上での共通の理念「料金の賢い3原則(1)利用度合いに応じた公平な料金体系 (2)管理主体を超えたシンプルでシームレスな料金体系 (3)交通流動の最適化のための戦略的な料金体系」を基本として、周辺の高速道路と同じ料率のもと対距離制へ移行したが、長距離利用の料金負担への配慮から、ETC普通車の場合32.3kmを超える利用者の上限料金は1,300円※2に設定していた。
この料金体系への移行から一定の期間が経過し、さらに対距離制を基本とした公平な料金体系を前進させるべく、利用者の負担が大幅に増加しないよう、当面の間、激変緩和措置として新たな上限料金が設定されることになった。
■長距離利用料金
今回の料金改定により、長距離利用の場合 は51.7kmまで距離に応じた料金へと変更。また、51.7kmを超える場合の上限料金は1,950円(ETC普通車)に設定された。
■走行区間例╱ETC普通車で利用の場合の料金
先述の通り、現状、32.3kmを超える長距離の利用者は全体の約1割程度。それ以外の約9割の利用者は、基本的には影響を受けない。
なお、現金車(現金精算などの車)については、現行の距離料金と同様に、一部端末区間を除いて入口で車種区分に応じた上限料金を支払うこととなる。
■車種別の利用料金
既存の割引の拡充に加えて、新たな各種割引を導入
今回の料金改定におけるトピックとも言えるのが、既存の割引の拡充に加えて、利用者の利便性のさらなる向上を目的に追加導入された新規割引だ。いずれも、ETC車が対象となる。
その新規割引の代表例が、「大阪都心迂回割引」と「神戸都心迂回割引」である。交通分散の観点から都心部を避けて通行する利用者が料金面で不利にならないよう、経路によらず起点・終点間の最短距離をベースに料金を決定するというもの。
「大阪都心迂回割引」は、6号大和川線の全線開通により新たなネットワークの活用が可能となったことを受けて導入される。4号湾岸線(三宝以南)と名神高速道路等・第二京阪道路・第二阪奈道路等(東大阪JCT以遠)を通行する場合に、大阪都心部を避けて6号大和川線・近畿自動車道を利用した時の料金が、都心を経由する経路の最安料金と原則として同額になる。
■「大阪都心迂回割引」ルート
◇新名神高速道路の高槻ICを含む。名神高速道路の吹田IC・京滋バイパス(名神高速道路)の久御山淀ICを除く。(※1)
◇第二京阪道路については、次のとおりとなる(※2)
(1)ETC2.0車以外
第二京阪道路(巨椋池IC以南の各出入口に限る)発着のみ対象。(巨椋池本線料金所以北の各出入口を発着する場合や、第二京阪道路以外の道路を発着し、久御山JCTまたは八幡京田辺JCTを経由して第二京阪道路を走行する場合は対象外)
(2)ETC2.0車
(1)の対象出入口に加えて、巨椋池本線料金所以北の各出入口を発着する場合や、第二京阪道路以外の道路を発着し、久御山JCTまたは八幡京田辺JCTを経由して第二京阪道路を走行する場合も対象。その際の料金は、ご利用の出入口により異なる。
■料金・ルート具体例
「神戸都心迂回割引」は、新名神高速道路の開通によって中国自動車道の渋滞が緩和されたことで、ネットワークをさらに活用してもらうべく導入される。第二神明道路(明石方面)と名神高速道路等・第二京阪道路・第二阪奈道路等・西名阪自動車道・南阪奈道路等(吹田JCT以遠)などを通行する場合に、神戸都心部を避けて北神戸線・中国自動車道を利用した時の料金が、都心を経由する経路の最安料金と原則として同額になる。
■「神戸都心迂回割引」ルート
◇新名神高速道路の高槻IC・中国自動車道の中国吹田ICを含む。名神高速道路の吹田IC・京滋バイパス(名神高速道路)の久御山淀ICを除く。(※1)
◇第二京阪道路については、次のとおりとなる(※2)
(1)ETC2.0車以外
第二京阪道路(巨椋池IC以南の各出入口に限る)発着のみ対象となる。(巨椋池本線料金所以北の各出入口を発着する場合や、第二京阪道路以外の道路を発着し、久御山JCTまたは八幡京田辺JCTを経由して第二京阪道路を走行する場合は対象外)
(2)ETC2.0車
(1)の対象出入口に加えて、巨椋池本線料金所以北の各出入口を発着する場合や、第二京阪道路以外の道路を発着し、久御山JCTまたは八幡京田辺JCTを経由して第二京阪道路を走行する場合も対象。その際の料金は、ご利用の出入口により異なる。
■料金・ルート具体例
「都心迂回割引」は目的地まで遠回りすることになるが、時間帯によっては都心経由ルートよりも所要時間が短くなるケースもある。このため、利用者はルートや時間帯を考慮して都心を迂回する経路を選ぶことで、より効率的な利用が期待できる。
また、すでに首都高速道路でも採用されている、交通量が少ない深夜時間帯へ交通を分散し、日中の渋滞緩和を図ることを目的とした「深夜割引」も新たに導入する。適用されるのは午前0時から午前4時まで。この時間帯に阪神高速道路に流入する利用については、20%の割引が適用される。
■「深夜割引」
他にも大阪都心部と関西国際空港方面を特定のルートで利用した場合、これまでの上限料金1,320円(ETC普通車の場合)まで引下げる「関西国際空港方面割引」の導入や物流を担う大口・多頻度利用の車両の負担が大幅に増加しないよう、最大45%の割引となる「大口・多頻度割引」を拡充する。
その他の新しい割引制度は阪神高速道路のホームページにまとめられている。
今回、新規導入または拡充される割引は、阪神高速道路をより快適に利用できるよう、主に「交通(時間帯・経路)の分散」をコンセプトにした制度となる。
料金改定の先に見据える交通の円滑化新路線開通を進める近畿圏内の高速道路ネットワーク
現在、阪神高速道路では4路線の工事を進めている。これにより、近畿圏のミッシングリンク(交通や道路の分断)解消に向けたネットワークの拡大が着実に形になりつつある。
【淀川左岸線(2期)】
開通済みの2号淀川左岸線(1期)と3号神戸線との接続部である海老江JCTから豊崎(国道423号/新御堂筋)までの4.4km区間を結ぶ路線。本路線の大部分は開削トンネル構造で、河川堤防との一体構造となる計画。大阪市との共同事業。
【淀川左岸線延伸部】
近畿自動車道の門真JCTから淀川左岸線(2期)の豊崎までの8.7km区間を結ぶ路線。大部分が開削トンネル工法およびシールドトンネル工法によるトンネル構造。淀川左岸線(2期)と同様に、一部区間で河川堤防と一体構造となる計画。国、NEXCO西日本との共同事業。
【大阪湾岸道路西伸部】
大阪湾岸道路の一部を構成し、供用中の5号湾岸線の六甲アイランド端末部からポートアイランド、和田岬を経由し、駒栄地区で供用中の31号神戸山手線へと接続する14.5km区間の路線。六甲アイランドからポートアイランド間、ポートアイランドから和田岬間で、国際航路をまたぐ形で長大橋を架設する計画。国との共同事業。
【名神湾岸連絡線】
名神高速・3号神戸線と5号湾岸線を接続する2.7km区間の路線。既に国が事業を進めており、今年度より阪神高速道路とNEXCO西日本が事業に参画。
■阪神高速道路の建設事業
高速道路ネットワークの整備が進むことにより、利用者は複数の経路を選択できるようになる。それにより都心部の渋滞緩和や移動時間の短縮が実現すれば、交通の円滑化が図られ利用者はより快適な走行が可能となる。今回の料金改定は、利用者のメリットを考慮しつつ、同時に公平な料金バランスを実現することが意図されている。
阪神高速道路の近未来ネットワークの実現は、関西経済の活性化はもちろんのこと、緊急輸送路として活用されるなど、災害に強いまちづくりにも貢献するものでもある。
阪神高速道路は利用者の豊かな暮らしをサポートし続けるため、これからもさまざまな施策に取り組んでいく。
【関連リンク】
阪神高速の料金が変わります(阪神高速道路)