提供:阪神高速道路株式会社

阪神高速3号神戸線(京橋~摩耶)で19日間におよぶ大規模工事。リニューアルのポイントと渋滞緩和対策とは

阪神高速3号神戸線(京橋~摩耶)で19日間におよぶ大規模工事。リニューアルのポイントと渋滞緩和対策とは

阪神高速3号神戸線は、阪神間を結ぶ関西の広域高速道路ネットワーク上で最も重要な路線の一つ。だが高度経済成長期に建設されたこの路線は、供用開始から半世紀以上が経過し、交通量の増大や通行車両の大型化が進んだことで、道路の骨格をなす構造物の損傷と老朽化の進行という問題に直面している。

阪神高速ではこうした問題への対策と、関西の都市インフラとしての高速道路ネットワーク機能の維持向上のため、「高速道路リニューアルプロジェクト」を進めている。
そのプロジェクトの一環として、2023年5月19日(金)午前4時から6月7日(水)午前6時まで、3号神戸線(京橋〜摩耶)上下線で、19日間におよぶ終日通行止め工事が行われることとなった。

京橋~摩耶は2010年にも通行止めによる大規模補修工事が行われており、当時は舗装の損傷部分の修復などにとどまっていた。しかし、今回の工事は床版の取替を伴う大規模なもので、将来、工事を行う際に効率化が期待できる装置の設置なども実施し、最新技術と工法が採用される。

通行止め区間 位置図
通行止め区間 位置図

長期間の終日通行止めを伴う大規模工事の背景

阪神高速3号神戸線(京橋〜摩耶)は、神戸の中心地である三宮に最も近い出入口を含む区間で、阪神間の交通の要所の一つ。国土交通省の「都市高速年間渋滞ランキング(平成31年・令和元年)」(※1)によると、3号神戸線西行(西宮JCT~第二神明接続部)が全国ワースト1位、東行(第二神明接続部~西宮JCT)が2位で、平日の1日当たりの平均交通量は約9万3300台(上下線の合計・2019年5月阪神高速調べ)と非常に交通量の多い区間だ。道路への負担が大きい大型車の割合も全体交通量の3割を超える(摩耶~生田川上下線の合計・2021年5月阪神高速調べ)。

2010年に行われた前回の補修工事から10年超、経年劣化と日々の交通量の多さによる振動や負荷も加わり、道路の表面や橋りょうの継ぎ目に設置されているジョイントに損傷が見られる状況だ。

さらに目には触れない路面の下でも、深刻な事態が進行している。
高速道路の構造上で非常に重要な役割を果たすコンクリート床版(しょうばん)の劣化が進み、コンクリートが砂利化してボロボロに砕けてきており、本来あるべき厚みと強度が徐々に失われつつあるという。
そのような重度の損傷が3号神戸線(京橋~摩耶)の2か所で顕在化しており、最悪の場合には、道路が陥没するなどの致命的なリスクが高まっている。

車の走行による振動や負荷でコンクリート床版が損傷
車の走行による振動や負荷でコンクリート床版が損傷

これらの損傷は、これまでは表面から穴やひび割れを修復することで対応してきた。だが、対症療法ではもう限界に近づいて来ている。建設以来50年以上使われ続けた床版は老朽化が進んでいるため、傷んだ部分を表面から直しても、その周辺に損傷範囲が広がって繰り返し補修しなければならない状態になってきている。

そのため、新しい床版に取替える抜本的な対策により、長期的な強度と耐久性を確保することが急ぎ求められている。家の修理で例えるなら、単なる補修工事というよりも改築に近いレベルの工事と言っていいかもしれない。

コンクリート床版は路面下では損傷が拡大していた
コンクリート床版は路面下では損傷が拡大していた

今回は、床版の取替を含む大規模な作業を行う必要があり、車線規制するだけでは施工が物理的に不可能なこと、工事区間周辺には住宅地も含まれるため騒音などへの配慮が不可欠で、深夜におよぶ工事は困難であることから、19日間の終日通行止めによる工事が必要という判断がなされた。

※1 ジャンクション区間別の渋滞ランキング。上り・下り(内回・外回、東行・西行)に分けて集計。対象は7時から19時で、混雑により余計にかかる時間(単位:万人・時間/年)を年間の合計で表したもの。

工期の短縮、騒音の低減など進化する道路工事

では床版の取替を含む今回のリニューアル工事とは、具体的にはどのようなものなのか。

コンクリート床版の取替にあたっては、2020年11月の12号守口線リニューアル工事において導入された最新の工法が採用され、工事期間の短縮を図り騒音を減らすさまざまな工夫が取り入れられている。

コンクリート床版は、スタッドジベルという鋼のくいで、その下の鋼桁と接合されている。

高速道路の構造図
高速道路の構造図

床版の撤去にはこのスタッドジベル部分のコンクリート除去が必要となるが、従来は人力施工で多くの時間と騒音を伴っていた。この課題を改善した工法が今回も採用されている。まずは、高水圧を発生させるウォータージェットを使ってコンクリートを除去し、床版を固定しているスタッドジベルをむき出しにしておく。低騒音のため、通行止め期間前の夜間の施工を可能にした。
そして、通行止め期間の本工事開始まで接合部に仮設部材を設置し道路の強度を保った状態にしておく。

ウォータージェットを使用した施工
ウォータージェットを使用した施工

これにより通行止め開始後はスタッドジベルを切断するだけで床版の撤去が可能となり、床版を撤去するまでの工期の短縮と低騒音化が実現した。

スタッドジベルと鋼桁の切り離し施工
スタッドジベルと鋼桁の切り離し施工

高い強度と耐久性を持ち、工場で前もって作られた新しい床版は、専用の機械やクレーンで鋼鉄製の桁の上に架設される。また、床版1枚あたりの大きさを大きくすることで施工性を向上させ、工期の短縮につなげている。これらの工夫には、同様に床版取替が行われた2020年の12号守口線工事の知見が活かされている。

コンクリート床版の取替工事には12号守口線のリニューアル工事で実施された最新工法を採用
コンクリート床版の取替工事には12号守口線のリニューアル工事で実施された最新工法を採用

そして床版の劣化の大きな原因である雨水の浸入を防ぐため、床版に高性能の防水加工を行い、長寿命化を図る。その上に水を通さない基層と呼ばれる車両の重みを均一に床版に伝える層と、私たちが普段目にする表層が舗装される。表層は表面に隙間が空いた、水たまりができにくい排水性がある舗装となっており、雨の日の事故の減少や、タイヤと路面の間の空気を逃すことで車の走行時の低騒音化が期待される。

また道路と道路のつなぎ目に設置される伸縮継手(ジョイント)をできるだけ削減し、既存のものを補修・更新することで、ガタンゴトンという車両通過時の騒音・振動の削減、安全性・走行性の向上、雨水の浸入による鋼材の劣化を防ぐ。

ジョイントが削除されることで、車体への振動が低減、走行性が向上する
ジョイントが削除されることで、車体への振動が低減、走行性が向上する

これまでジョイントの撤去には工事現場でよく目にする、大きな騒音と振動を伴うコンクリートブレーカーが使われていたが、巨大な糸のこでジョイント部分のみを水平に削ぎ取る最新鋭の機材が投入され、低振動・低騒音かつ短期間での作業が可能になった。また、将来ジョイントの取替の際に、工事をスムーズに行えるように、高水圧をかければ簡単に撤去できる装置が埋め込まれた伸縮継手も採用される。

そのほか、照明をLEDに変更することで、視認性の向上や消費電力・CO2削減、長寿命化により電球交換に伴う車線規制工事を減らすことにも貢献。案内標識の反射材の超高輝度化による夜間の視認性向上、これまで誤退出が多かった京橋出口と京橋PAへの案内は2色で色分けした案内標識とカラー舗装を施し、今までより認識しやすくする。さらに事故多発区間における注意喚起用の表示の追加など、この機会を最大限活用してドライバーの安全・安心・快適の実現とサービス向上に努める。

カラー舗装することで、京橋出口と京橋PAへの誤退出の改善を図る
カラー舗装することで、京橋出口と京橋PAへの誤退出の改善を図る

周辺道路への影響を緩和する対応策は?

阪神間の交通の要所である3号神戸線(京橋〜摩耶)を19日間通行止めにするリニューアル工事の時期は、渋滞が予想されるゴールデンウィークを避け、また梅雨の前で天候が安定した時期が選ばれた。

しかしながら工事期間中は、どうしても交通への影響は避けられない。特に明石方面から来た車両が京橋(東行)出口で、大阪方面から来た車両が摩耶(西行)出口で、一般道路に流出することに伴う渋滞など、高速道路や周辺の一般道路への影響が予想される。

リニューアル工事期間中の周辺渋滞予測(イメージ図)
リニューアル工事期間中の周辺渋滞予測(イメージ図)

阪神高速は、「工事期間中はできるだけ車のご利用を避け、公共交通機関のご利用をお願いします。やむを得ず車を利用される場合、3号神戸線は普段から渋滞する路線のため日中を避けた時差利用や、う回ルートのご利用をお願いいたします」と理解と協力を求めている。

3号神戸線と並走して大阪と神戸を結ぶ公共交通機関は、JR神戸線、阪急神戸線、阪神本線と3路線ある上、神戸市内での移動は神戸市営地下鉄、ポートライナー、六甲ライナーの利用も可能なため、工事期間中は車ではなく公共交通機関の利用も検討したい。

また通行止め期間中は、通常の乗継ルートだけでなく、リニューアル工事期間中のみ利用できるう回乗継ルートも設定される。
一般道路へのう回を伴う3号神戸線内の乗継、5号湾岸線・ETC車限定の32号新神戸トンネルを利用して工事区間を避けるルート、工事区間の北をう回する7号北神戸線〜11号池田線の乗継ルートがある。ほかに、激しい渋滞が予想される5号湾岸線の住吉浜・魚崎浜を避けて六甲アイランド北を利用した乗継では、工事期間中のみ住吉浜・魚崎浜を利用した場合と同じ料金が適用される。

工事期間中のう回出入口の概要
工事期間中のう回出入口の概要

周辺の渋滞緩和に向けて、阪神高速は工事前からテレビ・ラジオ・新聞やインターネット広告などの多種多様なメディアを通じ、ドライバーへの周知を図る。また、高速道路や一般道路上での横断幕や看板の設置、工事期間中に利用できない入口を案内する標識への覆幕、道路情報板での告知などを実施する。

さまざまな案内で通行止めを周知していく
さまざまな案内で通行止めを周知していく

工事期間中、名神高速道路、神戸淡路鳴門自動車道、第二神明道路では、う回経路の所要時間を確認できる仮設情報板を設置するなどの施策も積極的に進めていく。
また、特設サイトにおいては工事の進捗やう回経路の最新の所要時間などを確認できる。

特設サイトではう回経路の所要時間などを掲載
特設サイトではう回経路の所要時間などを掲載

最後に阪神高速の担当者は、次のようにコメントしている。

「今回の工事は、神戸市の中心部の区間を19日もの長期にわたって終日通行止めにするという、阪神高速のリニューアルプロジェクトの中でも例を見ない規模の工事です。日々の安全管理を怠らず、現場の無事故無災害に努め、また沿道住民の方々へのご迷惑を最小限にし、完工を目指してまいります。ご理解とご協力をお願いいたします。」

高密度の都市空間を縫うように走る都市高速の大規模リニューアル工事は、難易度が非常に高い。阪神高速は、これまで蓄積してきたノウハウと最新技術を投入して、利用者や沿道住民への影響をできる限り少なくしながら、将来にわたって「安心・安全・快適」を実現できるよう、この3号神戸線(京橋〜摩耶)上下線のリニューアル工事に取り組んでいく。

【関連リンク】
「阪神高速3号神戸線リニューアル工事」特設サイト